銀行口座にお金を預けておくのは安心に見える。盗まれる心配もなく、いつでも引き出せる。しかし、実際には「お金を守っているつもりが、少しずつ減らしている」状況にある。理由はインフレだ。
日本の銀行預金金利は、ほとんどが年0.001%程度。100万円を預けても1年間で利息はわずか10円ほどにしかならない。一方で物価は上昇を続けている。2024年の消費者物価指数は前年比で2%台を維持。つまり、1年間で物の値段は約2%上がるのに、銀行に置いたお金はほとんど増えない。実質的に購買力は減り、「貯金しているのに貧しくなる」という逆説が起きている。
では、どうすればいいのか。リスクを嫌う人にとって現実的な選択肢が「国債」だ。日本国債は信用度が高く、元本割れのリスクは極めて小さい。たとえば個人向け国債(変動10年型)は金利が市場に合わせて動く仕組みで、最低利率も保証されている。直近の利回りは大きな利益とは言えないが、銀行預金よりは確実に上回る水準だ。
投資信託や株式のような大きなリターンは狙えない。しかし、インフレ率をわずかでも超える利回りを確保できれば、資産価値は守られる。資産運用というと「攻め」のイメージが強いが、国債は「守りの道具」として現実的だ。
お金を減らさないために必要なのは、リスクを取らずに着実にインフレを上回る仕組みを持つこと。銀行にただ預ける安心感より、国債などの堅実な手段を選ぶほうが、将来の安心を大きくする。
以下、具体データを交えて「銀行預金ではインフレに負ける」「国債等で守る価値」の説得力を強めた記事です。
銀行に“預けておくだけ”では資産がすり減る理由と、インフレを上回る国債の現状
銀行にお金を預けておけば安全──そう思い込むのは危険だ。実際、現状の日本では物価上昇率(インフレ率)が、銀行預金金利を大幅に上回っており、「名目は同じでも実質(購買力)は下がっている」状況が続いている。ここで、直近の統計と国債の利回りを見て、なぜ国債のような守りの投資が重要なのかをデータで示す。
インフレ率の現状
- 総務省の消費者物価指数(CPI/全国)は、2025年8月で前年同月比 +2.7%。
- 「生鮮食品を除く総合指数」(コアCPI)も同じく +2.7%。
- 生鮮食品・エネルギーを除く物価(コアコアCPI)では、同じく +3.3%。
(參考元:Statistics Bureau of Japan)
これらの数字が意味するのは、日常生活で買うモノ・サービスの価格が概ね年率2.5~3.5%で上がっている、ということだ。
銀行預金金利とのギャップ
一方で、銀行預金(普通預金・定期預金等)の利率は非常に低い。多くの銀行で0.001~0.1%台、あるいはそれ未満という水準。これではインフレ率をまったくカバーできない。
たとえばもし年2.7%のインフレが発生しているなら、預金利が0.1%であれば実質の損失は約2.6%。100万円預けていても、「見せかけ上は100万円だが、買えるモノは昨年比で約2.6万円分減る」状況になる。
個人向け国債の現状利回り
こうした状況で、「インフレを上回る可能性のある安定資産」として注目されるのが個人向け国債。以下は最新の募集利率・想定利回りの例:
国債のタイプ | 利率(税引前) | 利率(税引後) | 特徴 |
---|---|---|---|
3年固定利付国債(第184回) | 約 0.93%/年 | 約 0.741%/年 | 利率固定;満期まで変わらない |
5年固定利付国債(第174回) | 約 1.12%/年 | 約 0.892%/年 | 中期の固定利率 |
10年変動利付国債(変動10年型) | 約 1.06%/年 | 約 0.844%/年 | 利率が半年ごとに変動、下限保証あり(0.05%) |
比較と“実質価値維持”の視点
上記の数字をインフレ率と比べると、現時点ではどのタイプの国債も利回りが インフレ率を下回っているか、ぎりぎり近いという状況だ。
- インフレ率(コアCPI含む):約 +2.7〜3.3%
- 国債利回り(税引後):約 0.7〜0.9%前後
つまり、今のところ多くの国債でも「インフレをカバーする利回り」とは言い難い。ただし、「銀行預金」と比べれば利回りは何倍も高く、またリスク(元本割れ等)は極めて低い。
なぜ銀行預金だけではダメか
- 銀行預金金利がほぼゼロに近いため、インフレに対して全くカバーできていない。
- 物価が年2〜3%上がる中、預けておくと実質購買力が毎年2〜3%ずつ失われる。
- 長期間この状態が続くと、たとえ預金額が名目上は増えていなくても、生活水準が下がる可能性が高い。
国債を選ぶ意味と注意点
メリット:
- 信用リスクが小さい
国が発行する債券であり、普通の国債はデフォルト(債務不履行)のリスクが非常に低い。 - 元本割れリスクがほぼない
償還まで持てば額面が返ってくる。変動利率型でも最低利率が設定されているケースが多い。 - インフレ圧力に一定対応できる可能性
利率こそインフレに追いつかないこともあるが、銀行預金と比べれば「損失を小さく抑える」手段となる。
注意点:
- 利回りがインフレ率を上回らなければ、実質的な購買力は下がる。つまり「守り」にはなるが、「増やす」には限界がある。
- 中途換金時の調整金などがある国債もあり、必要なときにすぐ資金を引き出せない場合がある。
- 税金・手数料・利払い頻度なども見ておく必要あり。
要点整理:今すぐできる守りの戦略
- 銀行に預けっぱなしにしない。最低限「インフレ率+α」が見込めるものを選ぶ。
- 個人向け国債の中から、自分の資金を長く拘束されてもよいタイプを選択する(固定利付 or 変動10年等)。
- 利回りだけでなく、中途換金条件・税引後利回り・最低利率保証などをチェックする。
- 分散も忘れずに:国債だけでなく、リスクの低い他の手段(例:優良社債、インフレ連動国債など)を検討。
結論:現在の日本では、銀行預金だけでは名目上のお金は守れても、実質的には価値が減り続ける。「国債」のような比較的リスクの低い金融商品を活用し、可能な限りインフレを超える利回りを確保することが、資産を貧しくしないための保守的な戦略だ。