中国、日本・台湾を巡る争いを国連に持ち込む

アバター画像 投稿者 美弦
中国、日本・台湾を巡る争いを国連に持ち込む

中国は、日本との外交的な対立を国連に持ち込みました。中国の傅聡国連大使は、国連事務総長アントニオ・グテーレス宛ての書簡で、日本が台湾問題で「武力介入」を示唆したと非難し、軍事的な報復を警告しました。

この書簡は国連全加盟国に公式文書として回覧される予定であり、北京のこれまでで最も強い反応となっています。日本の高市早苗首相は、11月7日の発言で中国が台湾に軍事行動を取った場合、日本が自衛隊を派遣する可能性を示唆していました。傅大使は、「日本が台湾海峡問題への武力介入を企てれば、それは侵略行為であり、中国は国連憲章に基づき自衛権を行使する」と述べています。

高市首相の国会での発言は、日本の長年の「あいまい戦略」からの転換となりました。彼女は、中国による台湾封鎖や軍事行動は「日本の存立を脅かす状況」に該当し、集団的自衛権の行使を認めるとしています。

この発言を受け、すぐに中国側から反発が起きました。中国の薛剣大阪総領事はSNSで高市首相を名指しし、「我々に襲いかかる首相の汚い首をはねるしかない」と投稿(現在は削除)しました。日本政府はこの発言を「極めて不適切」として抗議し、中国側は「個人の意見」と弁明しています。

高市首相は今後、個別の事案への言及は控えると表明しましたが、中国側の発言撤回要求には応じず、日本政府の立場を維持するとしています。

中国は、これに対し大規模な経済措置を講じています。11月14日には自国民に対し日本渡航自粛を呼びかけ、1~9月に約750万人の中国人観光客が訪れていた日本の観光業に影響が出ました。中国航空各社も日本便の無料変更・払い戻しを発表しました。

さらに、11月19日には日本産海産物の全面輸入禁止を再実施。中国は日本の水産物輸出の2割以上を占めており、貿易関係に大きな打撃です。この措置は、2023年の福島原発処理水放出による制限を部分的に解除してから、わずか数日後の再規制となりました。

文化交流も停止されています。中国当局は日本人アーティストによる公演を年内全て中止し、2026年までの新規申請も受付停止を指示。公開予定だった日本映画2本も延期となり、日中韓文化相会合も中止されました。

11月16日には、中国海警局船が尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺の領海で「権利行使巡視」と称する活動を行いました。


今回の対立は、アジア2大経済大国の近年で最も深刻な二国間危機となっています。2024年の日中貿易額は約2770億ドル、日本から中国への輸出(産業機器、半導体、自動車)は約1250億ドル、中国から日本への輸入(電気機器、機械、消費財)は1520億ドルに上ります。

日本の外務省や首相官邸は、傅大使の書簡へのコメントを現時点で発表していません。米国のラーム・エマニュエル駐日大使は「中国による経済的威圧の典型例だ」と述べ、「我々は高市首相を支持する」と加えました。

傅大使の国連宛書簡では「高市首相の発言は国際法上重大な違反であり、かつて日本の侵略を受けたアジア諸国や14億中国国民への挑発だ」と強調しています。

台湾の頼清徳総統は、中国の対日措置について「インド太平洋の平和と安定への打撃」と述べ、中国に対し自制と地域の安定維持を呼び掛けました。