日本の「失われた30年」は本当に終わったのか?2025年の最新データから真実を探る

日本の「失われた30年」は本当に終わったのか?2025年の最新データから真実を探る

2025年11月、東京の街は相変わらず人で溢れている。渋谷スクランブル交差点の通行量はコロナ前を15%上回り、コンビニの弁当は700円を超えた。銀座の土地価格はバブル期の9割まで戻り、六本木の新築タワマンは1億5000万円が即完売。
「日本復活!」と叫ぶメディアもあれば、「まだ終わってない」と冷めた声もある。
30年間ずっと言われ続けた「失われた30年」は、本当に終わりを迎えたのか。
最新の数字を一つ一つ見ていくと、答えは驚くほどシンプルだった。

1. 実質GDPはようやくバブル期を超えた

でも「一人当たり」はまだ8割

2025年7-9月期のGDP速報(内閣府)で、日本の名目GDPは初めて600兆円を突破。実質GDP(2015年価格)もバブル期の1997年度を0.8%上回った。
「ついに!」と思うかもしれない。
しかし一人当たり実質GDPで見ると、2024年度は約480万円。ピークの1997年度(約550万円)の87%にとどまる。人口減が効いている。
つまり「国全体の経済規模」は戻ったが、「一人ひとりの豊かさ」はまだバブル期に届いていない。

2. 日経平均は4万1000円

でも家計資産の6割は現預金

2025年11月12日、日経平均は一時41,283円を付けた。1989年の史上最高値38,915円を36年ぶりに更新。
株価だけで見れば「完全に終わった」と言える。
だが家計の金融資産2,100兆円のうち、54%が現預金(日本銀行・資金循環統計)。アメリカは13%、ユーロ圏は33%。
「リスクを取らない国民性」は30年経っても変わっていない。株高の恩恵は一部の投資家と大企業に偏っている。

3. 賃金は29年ぶりの伸び

でも物価上昇で実質はマイナス

2025年春闘の平均賃上げ率は5.46%(経団連集計)。1996年以来の高い水準だ。
厚生労働省「毎月勤労統計」でも2025年1-9月の現金給与総額は前年比+3.8%と29年ぶりの伸び。
しかし消費者物価指数(除く生鮮)は+3.2%。実質賃金はマイナス0.4%で、3年連続の減少。
「給料上がった!」と感じるのは大企業正社員だけ。中小企業と非正規は実質目減りだ。

4. 失業率は2.4%で完全雇用

でも正社員有効求人倍率は0.88倍

2025年9月の完全失業率は2.4%(総務省)。バブル期並みの低さだ。
しかしハローワークの正社員有効求人倍率は0.88倍。つまり正社員を希望する100人に対して求人は88件しかない。
「仕事はあるけど、希望する仕事はない」というミスマッチが続いている。

5. 企業内部留保は600兆円

投資に回らない本当の理由

大企業の内部留保は過去最高の600兆円(財務省法人企業統計)。
「投資しろ!」と政府は言うが、現実は違う。

  • 設備投資はGDP比で横ばい
  • 研究開発費は増えているが、半分はトヨタ・ソニーなど上位20社
  • 中小企業の7割が「後継者不在」で投資意欲ゼロ

6. 地方は本当にヤバい

東京一極集中の末路

東京圏の人口は増加しているが、47都道府県のうち38が人口減。
地方の銀行の貸出残高は20年で3割減。
2025年に「限界集落」は全国で2万を超えた(総務省)。
東京が復活しても、地方は「失われた30年」を超えて「失われた50年」に向かっている。

では、結論は?

失われた30年は「終わった」のか「続いている」のか。
答えはこうだ。

「東京の勝ち組にとっては終わった。  日本全体にとっては、まだ半分も終わっていない。」

2025年のデータが示すのは、二つの日本だ。

  • グローバル企業と投資家がいる「東京日本」→ 完全に復活
  • 中小企業・地方・非正規がいる「地方日本」→ まだ底を這っている

バブル崩壊から34年。
失われた30年は「時間」ではなく「格差」の問題だった。
数字は回復した。でも、その果実が届かない人が多すぎる。

だからこそ、2025年の今だから言える。
失われた30年は終わっていない。  終わらせられていない、のだ。

(参考資料:内閣府、総務省、厚生労働省、日本銀行、財務省、経団連、2025年11月時点公表データ)