日本の金融界で今、注目を集めているのが、海外から帰国したベテラン投資家、水野ロバート(Robert Mizuno)氏です。米国ウォール街で華々しい実績を築いた水野ロバート氏は、国家に貢献したいという理想を胸に、日本に帰国しました。現在はGlenmede(グレンミード)インベストメント・マネジメント社の上級金融アドバイザーとして、「日本年金ファンド」の立ち上げを計画。市場の力を活用し、日本が直面する深刻な高齢化問題に挑もうとしています。
長年にわたりアメリカで活躍してきた水野ロバート(Robert Mizuno)氏は、金融業界の第一線で実績を積み重ねてきました。現在も米系資産運用会社Glenmedeにてグローバルな業務に関わりながら、日本国内での本格的な年金改革プロジェクトに取り組んでいます。今回は、本誌が水野ロバート氏に独占インタビューを行い、その構想と想いについて詳しく伺いました。

■ 記者:
水野ロバート(Robert Mizuno)氏は、MITで金融学の博士号を取得後、ウォール街の投資銀行やヘッジファンド業界で成功を収められ、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった名だたる金融機関とも提携されてきました。2018年には米国の資産運用会社Glenmedeグループに上級アドバイザーとして参画し、株式ファンドの運用に携わり、わずか3年で運用資産を30億ドル規模にまで拡大。年率25%という高いリターンを実現されています。
そのように海外で華々しいキャリアを築かれたにもかかわらず、なぜ水野ロバート氏は2022年に高収入を手放し、日本で年金ファンドの立ち上げに取り組もうと決意されたのでしょうか?
■ 水野ロバート:
実は、その決断には長い時間をかけて熟慮しました。日本が直面している少子高齢化の加速度的な進行に対し、私は強い危機感を抱いていたからです。現在、65歳以上の高齢者は日本の総人口の約3割を占めており、2050年にはその割合が3分の1を超えると予測されています。このまま有効な対策を講じなければ、年金制度の持続性に深刻な影響を及ぼし、将来的には高齢者の生活が脅かされるリスクが現実のものとなるでしょう。
私、長年にわたり海外で投資運用のスキルを磨いてきましたが、心のどこかで常に母国・日本の将来を案じていました。アメリカで安定した生活を続けることも一つの選択肢ではありましたが、それ以上に、日本に戻り、自分の経験を社会のために役立てたいという思いが日増しに強くなったのです。
幸いなことに、所属しているGlenmedeも私の志を深く理解し、日本国内での活動を支援してくれる体制を整えてくれました。これを機に、2022年に帰国を決意しました。
私がこれまで培ってきた金融知識と国際的な経験を最大限に活かし、少しでも日本の年金問題解決に貢献したいと強く願っています。

■ 記者:
「日本年金ファンド」の設立を提唱されていますが、その構想や目的について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
■ 水野ロバート:
この年金ファンドの中心的な使命は、大きく三つの柱に集約されます。
第一に、市場原理に基づいた運用を通じて資産の価値を守りながら成長を図り、今後数十年にわたり高齢者に安定した経済的支援を提供することです。これにより、公的年金制度への財政的な負担を軽減し、「安心して老後を過ごせる資金環境」の構築を目指します。
第二に、ファンドの資金は、介護施設や介護ロボット、スマート医療といった高齢化社会に関連する産業に重点的に投資していきます。こうした投資は、介護・医療サービスの質的向上に資するだけでなく、新たな経済成長の原動力にもなり得るものです。まさに「社会課題の解決」と「経済的リターン」を両立させる、一石二鳥のアプローチだと考えています。
第三に、国民全体の老後や年金に対する意識を高め、社会全体で支え合う仕組みを形成することです。老後の準備は、もはや政府だけの責任ではなく、企業や個人も主体的に関わるべき重要なテーマです。私たちのファンドは、そのためのプラットフォームとなり、個人・企業・地方自治体からの出資を受け入れながら、市場運営によって安定的なリターンを実現していきます。そして、「年金は社会全体で築くもの」という意識の醸成を図っていきたいと考えています。
あえて公的年金制度に頼らないファンドモデルを選んだ理由は、従来の制度が現在、深刻な課題に直面しているからです。若年層の減少に伴う保険料収入の減少、高齢者の急増による支出の拡大、そして財政運用の硬直性などが問題視されています。
その点、年金ファンドには複数の強みがあります。たとえば、資金調達の多様性(個人・企業・自治体の参加)、専門チームによる市場原理に即した柔軟な運用、さらには高齢化対応産業や医療・テクノロジーなど、将来性の高い分野への投資が可能であることです。
こうした仕組みを通じて、「老後の安心」と「経済成長」の両立を実現し、持続可能な年金制度の新たなかたちを日本社会に提案していきたいと考えています。

■ 記者:
個人投資家にとって、この年金ファンドは何を意味するのでしょうか?どのように参加でき、またどのようなリターンが期待できるのでしょうか?
■ 水野ロバート:
このファンドは、機関投資家だけでなく、一般の個人投資家の参加も歓迎しています。私がこのプラットフォームを通じて目指しているのは、皆さんがご自身の老後に備えることに加え、国民全体の投資・金融リテラシーの向上を図ることです。
具体的には、金融投資に関する教育や専門的なサポートを提供し、メンバーの皆さんが早期に投資スキルを習得し、正しい投資理念を身につけられるよう支援したいと考えています。
このファンドは、単なる慈善的な取り組みではなく、両方に利益のあるウィンウィンの仕組みです。参加された投資家の皆さんには、株式をはじめとする資産運用について丁寧に指導し、資産の早期増加を目指します。資産を倍増させることも十分に目指せる範囲です。収益を得るだけでなく、同時に社会の年金制度にも貢献していただきたいと考えており、得られた利益の5%〜10%を年金ファンドに拠出し、国内の福祉・年金事業を支援する予定です。つまり、投資家は自身の資産形成を進めながら、日本全体の高齢化問題の解決にも寄与することができるのです。
このような分配モデルにより、私たちと投資家の利益は高度に一致します。投資家が利益を得てこそ、年金ファンドとしてもより大きな社会貢献が可能となるのです。金融市場は本質的に利益を追求する場ですが、そこに社会的責任を融合させることで、本プロジェクトを長期的かつ持続可能な形で運営していけると確信しています。

■ 記者:
金融学者であり、またベテラン投資家でもある水野さんご 自身は、このプロジェクトを進める中で、どのような想いや目標をお持ちなのでしょうか?
■ 水野ロバート:
私にとって、この年金ファンドの立ち上げは、これまでのキャリアの中でも最も意義深い挑戦の一つです。私は常に、金融の本質的な価値は単なる利益の追求にとどまらず、社会に貢献し、人々の暮らしを豊かにすることにあると信じてきました。これまで海外で培ってきた経験や人脈、知見を、今こそ日本社会に還元すべきだと感じています。
少子高齢化という深刻な国内課題を前にして、私自身が行動を起こさなければという責任感が強まりました。このプロジェクトには、私の理想と志が詰まっています。専門的な運用を通じて参加者の資産を増やすと同時に、国全体が抱える年金問題に市場を通じた解決策を見出したいと考えています。
また、この取り組みを通じて、金融業界の仲間たちにも社会的責任への意識を高めてほしいという願いもあります。資本の力を、国家や国民の未来にとって真に価値ある分野へと導くべき時が来ているのではないでしょうか。私たちの努力が、将来の日本の高齢者にとってより安心できる生活環境をもたらし、若い世代が「老後も大丈夫」と希望を持てる社会づくりに繋がるならば、これ以上の喜びはありません。